「いつもより急に売れた」「仕入れが遅れた」——こうした予想外のときでも欠品しないために持っておく在庫が 安全在庫 です。意味・計算式と計算例・発注点との違いを、やさしく解説します。
安全在庫とは
安全在庫とは、需要のばらつきや調達の遅れに備えて、最低限持っておく予備の在庫です。
理論上ぴったりの在庫だけを持つと、少しでも需要が増えたり納品が遅れたりしただけで欠品します。安全在庫は、その「ぶれ」を吸収するためのバッファ(余裕)です。
ポイントは、安全在庫が備える相手は**平均的な需要ではなく「変動」**だということです。平均分の在庫は通常の補充でまかない、平均からのブレの分だけを安全在庫が受け持ちます。
安全在庫の計算式
代表的な計算式は次のとおりです。
安全在庫 = 安全係数 × 需要のばらつき(標準偏差)× √調達リードタイム
- 安全係数: どのくらい欠品を許さないか(サービス率)に対応する係数。欠品を強く避けたいほど大きくする。
- 需要のばらつき(標準偏差): 日々の需要の変動の大きさ。ばらつくほど安全在庫は多く必要。
- 調達リードタイム: 発注してから入荷するまでの期間。長いほど安全在庫は多く必要(√で効く)。
安全係数の目安
安全係数は「サービス率(欠品させない確率)」から決めます。
| サービス率 | 欠品許容率 | 安全係数 |
|---|---|---|
| 90% | 10% | 1.28 |
| 95% | 5% | 1.65(よく使われる) |
| 99% | 1% | 2.33 |
サービス率を上げるほど安全在庫は急激に増えます。すべての商品を99%にするのではなく、重要な商品ほど高く設定するのがコツです。→ ABC分析とは
計算例
ある商品について——
- 欠品許容率5%(安全係数 1.65)
- 日次需要の標準偏差 5個
- 調達リードタイム 4日(√4 = 2)
安全在庫 = 1.65 × 5個 × 2 = 16.5 ≒ 17個
この商品は、平均需要分の在庫とは別に約17個の余裕を持っておけば、95%の確率でリードタイム中の欠品を防げる、という計算になります。
簡易的な求め方
標準偏差の計算が難しい場合は、簡易法から始めても構いません。
安全在庫の目安 = リードタイム中の過去最大需要 − リードタイム中の平均需要
たとえばリードタイム中の出庫が最大130個・平均100個なら、差の30個を安全在庫にします。まず設定して運用し、欠品・過剰の実績を見ながら調整していく方が、計算に悩んで設定しないより遥かに有効です。
発注点との違い
安全在庫とセットで使われるのが**発注点(発注するタイミングの在庫量)**です。
発注点 = 調達リードタイム中の予想需要 + 安全在庫
先ほどの例で、1日の平均出庫が25個・リードタイム4日なら——
発注点 = 25個 × 4日 + 17個 = 117個
- 安全在庫=欠品に備える「下限の余裕」。常に持っておく分。
- 発注点=在庫がここまで減ったら発注する「合図」。安全在庫を内側に含む。
在庫が発注点を下回ったら発注する、というルールにすると、補充のタイミングを逃しません。→ 発注点とは / 適正在庫とは
多すぎ・少なすぎの弊害
| 安全在庫が… | 弊害 |
|---|---|
| 多すぎる | 保管コスト増・資金の固定化・廃棄ロス(過剰在庫) |
| 少なすぎる | 欠品・販売機会の損失・顧客満足の低下 |
ちょうどよい水準は商品ごとに違うため、売れ筋(重要な商品)は手厚く、動きの少ない商品は控えめに設定するのが基本です。
見直しのタイミング
安全在庫は「一度決めたら終わり」ではありません。次のタイミングで見直します。
- 需要が変わったとき: 季節・トレンド・キャンペーンで販売ペースが変わった
- リードタイムが変わったとき: 仕入先の変更、輸送事情の変化
- 欠品・過剰が実際に起きたとき: 設定値が実態に合っていないサイン
在庫の実績データ(出庫数の推移)が蓄積されているほど、この見直しの精度が上がります。
在庫管理システムでの安全在庫
クラウド在庫管理システム「クラプロ」では、商品ごとに 在庫下限 を設定でき、在庫がそれを下回ると 在庫アラート に「在庫不足」として表示されます。
- 安全在庫(または発注点)を在庫下限として設定しておけば、欠品の前に気づいて発注できます。
- 在庫上限もあわせて設定すれば、過剰在庫も同じ画面で検知できます。
- レポートで出庫の推移を確認でき、安全在庫の見直しに使えます。
設定方法は利用ガイドの 在庫アラート と 商品の管理 をご覧ください。
安全在庫に関するよくある質問
Q. 安全在庫とは何ですか?
需要のばらつきや仕入れの遅れに備えて持っておく予備の在庫です。平均需要ではなく「変動」に備えるのが役割です。
Q. 計算式は?
「安全係数 × 需要の標準偏差 × √リードタイム」が代表的です。欠品許容率5%なら安全係数は1.65を使います。
Q. 発注点との違いは?
安全在庫は常に持つ「下限の余裕」、発注点は「ここまで減ったら発注する」合図の水準です。発注点=リードタイム中の需要+安全在庫、の関係にあります。
Q. 標準偏差の計算が難しい場合は?
「過去の最大需要 − 平均需要」を目安にする簡易法で始めて、実績を見ながら調整すれば十分実用になります。
まとめ
- 安全在庫とは、需要や調達のぶれに備える予備の在庫。平均ではなく「変動」に備える。
- 計算は「安全係数 × 需要のばらつき × √リードタイム」。サービス率95%なら係数1.65。
- 簡易には「最大需要 − 平均需要」から始めて運用で調整すればよい。
- 発注点は「リードタイム中の需要 + 安全在庫」。
- 在庫管理システムの在庫下限・アラートで、欠品前の発注を仕組み化できる。
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